VONDS市原 vs ブリオベッカ浦安:観戦レポート〜優勝争う千葉県対決

関東サッカーリーグ1部の後期第6節がゼットエーオリプリスタジアムで行われた。同会場をホームスタジアムに構える2位のVONDS市原が1位のブリオベッカ浦安を迎えた。昨今の関東リーグをけん引する両チームの対戦は、それぞれが勝ち点32を引っさげての頂上決戦となった。千葉県を代表する2チームが関東の頂点で争うというのは、元千葉県民として何とも胸が踊る状況だ。日付は8月9日。夏休みもいよいよ折り返し地点を迎えるところでいわゆる「夏真っ盛り」の気候を象徴するような日だった。

五井駅から見慣れた道をひたすら歩き、汗だくで辿り着いた会場ではうわさ通りの賑わいを見せていた。露天がズラっと並び、VONDS市原のノボリが力強くなびく。つかの間の日陰であるスタンド下を通りピッチに出ると、沢山の子供たちが炎天下でVONDS市原の選手らと元気よくボールを追いかけていた。灼熱の太陽など彼らには彼ら自身を輝かせるスポットライトでしかない。彼らのキラキラとした姿を見てるだけで元気が湧いてくるというものだ。

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VONDS市原がこれほど大々的な催しを行う機会は、聞くところによると多くはないらしい。それ程にこの頂上決戦であり千葉県対決でもある試合を盛り上げようということなのだろう。JFLでも十分につようしそうなその賑わいから、VONDS市原がこの試合にかける気合が十分に伝わってきた。

日が傾きかけた16時にはスタンドも適度に熱気を帯び、子供たちを中心とした大きなVONDSコールが響き渡った。一方でブリオベッカ浦安も応援に駆けつけたサポーターと子供たちの声援で会場を暖める。十分に士気が高まったところで関東サッカーリーグ1部の頂上決戦が幕を上げた。
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均衡を破ったセットプレー

試合開始後の間もなくは、VONDS市原がホームの声援を受けた勢いをそのままに押し込む展開となった。しかしながら流石ライバル対決と言うべきか、ある程度のところまで押し上げても決定的な場面までは到達できない。それはブリオベッカ浦安にとっても同様で、ペナルティエリアより先は侵入が難しく、必死さは匂わせつつも縦へ横へとロングボールが飛び交う様子が続いた。至って単調な出だしとなったが、首位攻防戦なのだからこれくらいの緊張感と均衡がちょうどいい。

均衡状態で構わないのだが、問題はこの均衡をいかにして破るかというところが焦点になる。生憎、私は両チームの試合を観るのは今年はこの試合が初めてだ。両チームのある程度の戦力は把握しているが、どんな戦術で武器が何なのかまでは把握していない。ホームの雰囲気に飲まれつつも、変化を待つべくひたすらにファインダーを覗くしかなかった。
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ピッチ内の緊張状態は感じ取っていたので、前半が無得点で終わることはないだろうと予感はしていたが、試合はわりと定石通りに動くのであった。前半21分、ブリオベッカ浦安は左サイドのコーナーキックを得ると、放り込んだボールがゴール前に落ちたところを、すかさず笠松亮太選手が押し込んで先制点とした。
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VONDS市原が勢いでブリオベッカ浦安を押しこむ一方で、しぶとく守ったブリオベッカ浦安がセットプレーひとつで状況を打開してしまった。これぞサッカーの面白さであり怖さでもある。結果的にこの試合はブリオベッカ浦安が制するのだが、この先制点こそが全ての流れを決めたと言っても過言ではない。過言ではないというのも、先制点を奪ったブリオベッカ浦安がその後の展開で余裕をもってボールを捌けるように見えたからだ。
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焦るVONDS市原を振り回す・・

前半は1-0でブリオベッカ浦安がリードしたまま終えた。そしてその勢いは後半も続く。関東初制覇を目指すVONDS市原の意識が攻撃に傾く裏を突くようにブリオベッカ浦安は得点を重ねた。ブリオベッカ浦安は後半9分に上松瑛選手の、後半18分に竹中公基選手の得点で3-0と突き放す。私は今回はホーム側(後半のブリオベッカ浦安陣地)のゴール裏でカメラを構えていたので反対側での出来事について正確な距離感はつかめなかったが、ブリオベッカ浦安が焦るVONDS市原を振り回すようにボールを動かしていたのが印象的だった。
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実のところ、この試合を迎えるにあたり両チームは極端だった。ホームのVONDS市原が前節でFWの得点源でもある二瓶翼選手(前:水戸ホーリーホック)を怪我で欠いた一方で、ブリオベッカ浦安は昨年のチーム得点王である清水康也選手(前:東京ヴェルディ)と秋葉勇志選手(前:東京ヴェルディ)が復帰していたのだ。両選手ともにベンチからのスタートであったが、彼らがピッチに姿を表す度に安定感を増してくるのがなんとも言えない凄味であった。もしかしたら不安材料をもつチームと好材料を持つチームの気持ちの差すらあったかもしれない。

諦めないVONDS市原

試合終盤にさしかかり、ブリオベッカ浦安の優勢はいつまで経っても変わらない。しかしながらVONDS市原が無得点で終えるとも思えなかった。

ここがひとつJFLと地域リーグの差でもあると思うのだが、ブリオベッカ浦安も守備における寄せにもう一歩の厳しさが無かったのだ。VONDS市原にアタッキングゾーンで攻撃の機会を与えてしまっていた。関東では絶対的なブリオベッカ浦安も、全国大会ではおそらくこの辺りが隙となってくる。
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近未来の話はさておき、つまりこの試合はクロスやミドルシュート、セットプレーのひとつで状況が変わりかねない状態だった。まして、VONDS市原は公式発表で2000人近いホームの応援が背中を押している状態にある。「最後まで諦めるな」という子供らの鼓舞を受けて足を止めるはずがなかった。
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VONDS市原が無得点で終わるはずがない予感は的中した。後半33分、VONDS市原はゴール正面でボールを保持した今野順選手が灰色の壁を前にして右足を振り抜くと、そのシュートがゴール左隅を突き刺して一矢報いる得点となった。今野順選手はゴールに収まったボールを拾い上げると、颯爽と自陣へ戻っていく。子供達よ、絶対に諦めない姿勢はきちんと目に焼き付けたかい?
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試合は最終的にブリオベッカ浦安が1点を追加して、4-1でブリオベッカ浦安の勝利となった。「頂上決戦」である割に意外と大差が開いてしまったが、振り返ってみれば、それ程に差のある試合でもあった。しかしこの大差はVONDS市原が気持ち的に前掛かりになってしまった故でもあるので、例えばVONDS市原が先制していたら、立場も変わって結果は逆だったかもしれない。サッカー場に住み着く妖怪の仕業も少なからず存在しただろう。

関東サッカーリーグ1部は残り3試合を残し、ブリオベッカ浦安が2位のVONDS市原に勝ち点差3をつけて単独首位に立った。

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千葉県内の好敵手として

試合後、対戦相手のベンチに慣例的な挨拶を行うと両チームの選手とスタッフは一つの境界線が消失したかのように混ざり、固く握手を交わし、笑顔と苦笑いを交えて健闘を讃えあった。同じ千葉県を舞台にしているということで、両チームは馴染みもあり交流もあるらしい。
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試合前に行われた佐久間隆義氏(前:市原市長)の就任挨拶へ駆けつけたセルジオ越後氏は場内マイクを通じて「ブラジルでは『良きライバルがないといけない』というジンクスがある」という言葉を用いて両チームの健闘を祈っていた。『ライバル』というのは日本のサッカー観戦文化ではよく「宿敵」のように流布され解釈されてしまい、相手を蔑む対象とされてしまう。しかしこの際に必要な「ライバル」とはこうして全力でぶつかり合い、高め合う「好敵手」なのだろう。
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試合ではブリオベッカ浦安が圧勝した。しかしながら、VONDS市原が集めた観客動員2,100人は関東サッカーリーグでは破格の数字となる。VONDS市原ブリオベッカ浦安は同じ関東サッカーリーグ1部の優勝を争う立場だが、それぞれの生い立ちが違えば長所も短所も異なる。地図を眺める限りでも、方や住宅密集地で方や工業地域という対比も、それぞれの特徴が現れやすそうで面白い。

千葉か、柏か、(あるいは鹿島か)という千葉県サッカー勢力図は10年以上も変わり映えしていない。そんな勢力に比べたらまだまだ小さい存在かもしれないが、好敵手としてこの2チームが切磋琢磨していけば、その勢力図にも変化が現れ、千葉県のサッカー文化はきっとより面白くなる。

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