第49回全国自衛隊サッカー大会:観戦レポート〜サッカーの素の面白さを求めて

決勝、海上自衛隊厚木基地マーカスvs海上自衛隊下総航空基地

決勝戦は先述の通り、海自下総と海自厚木マーカスの対戦となった。

試合が始まってみると、やはりマーカスの方が上手に見えた。マーカスは舞台慣れしているのだろう、とても冷静で淡々とボールをゴール前へ運んでいく。本大会で観戦したこれまでの3試合はいずれも試合展開に対して順当の結果が現れた。やはり決勝戦でも優勢にすすめる方であるマーカスが押し切るのだろうか。

海自下総は先にも述べたが、ここ数年で積極的な補強を行うなど、チームの強化に努めていた。練習もほぼ毎日行っているといい、一般的なアマチュアチームとはサッカーに向きあう時間で一線を画している。記事内ではよりキャッチーにするため「古豪」と表現してみたが、強かったのは数十年前の話になるので実態を表すのには相応しくない。海自下総の雰囲気としてはどちらかと言えば新興チームのそれに近かった。端的に言えば「挑戦者」だ。準決勝後、海自下総のキャプテン鈴木徹選手に決勝戦で観てほしいポイントを尋ねると、マーカスと比較した上で「若さ」と答えてくれた。なるほど、こう書き綴りながら振り返ってみれば、この言葉は正しく海自下総をよく表していた。

後半、長い間で膠着状態が続いた。3位決定戦でスコアレスを目の当たりにしている身としては、暑さに煩わしさを感じながら、延長戦への突入を覚悟していた。ピッチ内からもジリジリとした雰囲気は少なからず感じ取れ、まさしくその隙に決勝点が生まれたのだ。海自下総はペナルティエリア手前でボールを保持したFW室田悠貴選手が思い切り良く右足を振りぬくと、これがゴールへ綺麗に収まる。これまでの海自下総はサイドに展開して崩すのが常套手段だったため、マーカスもそれを警戒してか、ボール保持者に対する寄せが甘くなっていた。誰もが「まさか」と思うタイミングで思い切りの良いシュートが放たれたのだ。そのまさかのシュートが入ってしまう辺りがまた決勝戦らしくドラマチックに映る。海自下総は観てほしいと言った「若さ」を文字通りに炸裂させて、優勝を手に入れた。

サッカーの素の面白さ

「自衛隊サッカー大会に感じている魅力ってなんなんだろう」という問いに対する答えの一つが見つかった。それはサッカーの素の面白さが凝縮されていることだ。確かにJリーグや海外のリーグに比べたら見せ場は少ない。しかしどんなカテゴリであっても真剣さを伴ってなお力関係が咬み合っていれば、とても緊張感が漂う試合となる。とりわけこの大会に出場するチームはもれなく、試合開始の合図があってから終了の合図があるまで、ひたむきに勝利を求めている。割と単純な事だが、日本最高峰の技術と戦術を持ち合わせたJリーグの試合ですら、両者が最初から最後まで勝利にひたむきになった状態の試合は稀にしか観ない。そんな日本でも稀にしか見れない両者揃っての真剣勝負を、今回はたった一瞬のマークの緩みと思い切ったシュートが勝負を分けたのだ。ドラマ性としてはどんなワールドクラスの試合と比較しても遜色が無い。

「サッカーの何が人を引きつけるのだろうか。」というのは私の基本的なテーマのひとつだが、それを明確に説明するためのキーワードはサッカーの素の面白さが凝縮されているこの大会に隠れていると考えている。残念ながら明確な答えには今年も辿りつけなかったが、その可能性と面白さは今年も再認識できた。

私の知る限り自衛隊サッカー大会は一切のハズレなく、サッカーで人を魅了する何かがある。海上自衛隊下総航空基地の優勝で締めくくられた今回もまた例外ではなかった。次回大会はまた1年後のこの時期となるが、引き続き最高のフットボールを目の当たりにできるのを楽しみにしたい。

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