J3リーグ誕生の傍らで〜JFL事務局長インタビュー第3回

確かにウーヴァやMIOに関しては、実力だけではなく、クラブの総合力という部分でもまだ難しいと思うところはありますね。ただ、『ここは行かないんじゃないか?』と思われていたY.S.C.C.が手を挙げたことで、『だったらウチも!』という感じで、準備不足が否めない中で踏み切ってしまったところもありましたからね。

加藤まあ、ウーヴァはちょっとさ、まだ母体そのものがちょっと弱い感じがあったし、その点ではMIOも同じだった。で、その中でやっぱりFC琉球だよね。あそこはこれまで榊原さん(元PRIDEプロデューサー)が社長をやって、沖縄に根付かせようとやって来た人だけど、今回の参入に当たってはその榊原さんが辞めるってのがJに入る条件だったからね。

J側は『個人の持ち出し』でクラブを動かすことに対して反対の姿勢でしたからね。でもそれによって琉球は資金力という部分ではかなり落ちてしまいましたよね。

加藤確かにあの人(榊原さん)がいなくなると、琉球はかなりきついだろうなぁってのはあったけどさ、何故Jリーグが榊原さんのことにそこまでこだわったのかな? っていうのはあった。まあ僕も過去の格闘技関連の話は聞いていたけど、それはそれで過去の話じゃないですか? まあねえ、それで元々苦しい状況で続いていたチームなんだから、今回の参入のタイミングで切らなければいけないって言うのもどうかねえ…とは感じたけど。それでさ、その件とお客さんが減ってしまったというのは、直接関係はないとは思うけどさ、結果的にあの人が持っていた資金力が無くなってしまったことにより、これまでプロ契約で雇っていた選手を賄え切れなくなり、J3というJリーグカテゴリーに入ったのに、選手はアマチュアが増えるという逆行した状態になってしまったことが影響しているとは思うし、僕も琉球があそこまでお客さんが減るとは予想しなかったね。

これまでの琉球は普通に1000人、2000人台は行っていましたが、J3になってからはまだ1000人超えを達成したのは前半戦では3度だけですね。(※2014年シーズンを通しての平均は1398人。しかし、2013年の2164人よりダウンした結果となっている)

加藤開幕でU22(Jリーグ・アンダー22選抜)を呼んだ3月の試合なんかはさ、普通『J3オープニングマッチ』ということでさ、もっと盛り上がってもいいのに1500人ちょっと(実際には1517人)で終わってしまったし、毎年いつも『1万人デー』っていうのを沖縄県協会とやっているんだけど、今年は例年の夏場ではなく、天皇杯予選の関係もあって6月にやったんだけど、4362人で終わってしまっているんだもんね。やっぱりあっちのほうの人はさ、チームに魅力がなくなると一気に遠のいちゃうっていう感もあるのかなあ?

そんなこともあり、本当に無理をしてJ(J3)に行くのがいいことなのか? という疑問はやっぱり生まれてきますよね? そんな中でウーヴァなどはJ3参入を目指して準備を進めていますが、最終的にJ3、そしてその先を目指す事は悪くはないですが、今はクラブとしてしっかりとした力を着けるべきなのでは? とも感じてしまうのですが…

加藤普通にお客さんで言えばさ、やっぱり2千人ぐらいはいかないとやっぱりダメだよね。J3と言ってもJリーグの仲間なんだから。まあ一応、今のJFLではJ3に入る基準として成績だけではなく、観客動員という面でも平均2千人って数字も必要にしているんだけど、山口は最終的にクリアするだろうけど、今の数字だけだと将来的には厳しくなってくるとも思うよ。でもその点では、鹿児島は盛り上がっているから、僕はこっちに関しては心配していないんだよね。九州地区で唯一全国リーグの空白地だった鹿児島だからこそ、もっと頑張って、他のみんなに一日も早く追いつき、そして追い越せという意識がある。だからこそ地元的にも盛り上がっているんだけど、そもそも高校サッカーの強豪地区だしサッカー好きも多い土地柄だからから雰囲気的にも悪くないし、2千人以上のお客さんも入っているんで安心して見守っているんだよね、ここに関しては。それに対して山口はね、まだまだ頑張っていかないとさらなら発展に結びついていかないし、沼津なんかもまだまだかな? とも感じるね。

少々手厳しいですね(笑) そんなことを言ってしまったら、名前は出しませんが、あるJ3クラブもちょっとマズい状況だと思うますよ。観客動員の公式発表数に関して琉球は『盛っていない』と思いますが、そのクラブは少ない時には確実に盛っていますからね(笑)。前半戦に取材で行ったときにちょっと気になったので、ハーフタイムの途中から数えてみましたが400人ぐらいしかいなかったのですが、公式発表が出たときに思わず笑ってしまいましたから。その数字を言ってしまうとどこだか分かるので言いませんが、あまり好ましくはないですよね。

加藤その数字で盛っているんだ?(笑)

はい(笑)たぶんメインスタンドで観戦していたサブのベンチ入りしていない選手たちを入れてもそれぐらいでしたから。

加藤そこまで見栄を張らなくてもいいのにねえ…(笑)

こういうところも、正直に行くクラブもあるし、まあこれぐらいでも…というクラブなどいろいろあるし、当然クラブによって方針やスタイルというものが違うとは思いますが、この状態で『僕らもJリーグの仲間なんですよ』と言われても、正直微妙だなあ…と感じますし、JFLと両方を見ているとその思いを強く感じます。確かに福島ユナイテッドFCのように、ちょっと背伸び感はあったかも知れないけど、チャレンジしたことで得る物が大きかったチームもあるし、J2を狙う4クラブなどは、より高い意識を持ってフロントも含めて必死になっています。でもその他のチームはどんなビジョンを持ち、直近でどんな目標を立てているのか? ということすら微妙なところもりますし、堅実にJFLでやっていたほうが良かったんじゃないのか? と感じるクラブは実際にありますよね。

加藤うーん…、その点は難しいよね。っていうかさ、僕はたぶん二つの形があると思うんだけどさ、思い切ってチャレンジして、そこから少しずつ自分たちの形を作り上げてくっていうクラブと、周囲で『そういう雰囲気』が強くなって行き、応援してくれる人もいるから、じゃあその人たちの押し上げも借りて、一気に行ってみるか? という感じ行くクラブ。まあかつてJ2に上がって行ったクラブにも、この2つの形のどちらかがあてはまると思うんだ。例えば2014シーズンはJ1クラブとして戦うヴォルティス徳島(徳島ヴォルティス)なんかもさ、一時は母体である大塚製薬は『(プロへのチャレンジは)もうやらない』って言ってた時期もあったりしたけれども、県知事が変わってからというもの、その知事さんが元々埼玉にいた人だったから、『徳島には大塚があるんだからサッカーで地域を盛り上げよう』と言い出した事をきっかけに話が再び再燃し、一時はプロへの道を諦めかけていた大塚を説得することに成功し、J2、そしてJ1への道が切り開けた訳だよね。でもさ、大塚の場合は元々チーム力はあったんだから、形さえ変えればすぐにでも順位的なものはクリア出来た。まあはっきり言ってさ、当時のお客さんの入り具合は決していいとは言えなかったよ。サッカーに興味の無い一般層は『大塚製薬がサッカーをやっている』ということにすら知らない地元の人も結構いたぐらいだったからね。

しかし行政のトップからのハッパもあり、あれよあれよと言う間にJ入りは決めることが出来た。でもそっからはしばらく厳しい時間が続いたよね。J2に入ったはいいけど、JFLとは違ってチームはなかなか勝てず、連続最下位という年も続いた。でも段々チームも強くなって行き、J1にも上がる事は出来たけど、これはやっぱり周囲の『後押し』というものは当然だし、さらには大塚製薬っていう会社の資金力のたまものだったとも思うよね

確かに資金力というのは大事ですよね。徳島と同期昇格でJ2に上がったザスパは大きな後ろ盾も何も無いクラブだからこそ、J2からは落ちてはいないものの、J1に上がるなんてことも、夢のまた夢な状態が続いているし…

加藤あそこは資金力は無いよね(笑)。まあどっちかっていうとさ、ザスパはススッと上がって行ったよね。でもさ、今のJ2でくすぶっているチームを見てみるとさ、ススッと上がっていたチームは結構このスパイラルに陥っているね。そんな中ではさ、松本(松本山雅FC)とかなんかは地域リーグ時代からかなり苦労して来ているじゃない? それでもって、今ここに来て一気に突き抜けそうな雰囲気もあるよね?(※実際に2014シーズンを2位で終え、2015年シーズンはJ1で戦うことに) まあある種の偶然かも知れないけどさ、地元で行われた天皇杯で浦和レッズに勝っちゃったりとか、地域リーグの決勝ラウンド上がったときが、たまたま地元だったとかさ。こんなように、チームに勢いがつくような『流れ』を生み出す事は必要なんだけどさ、これはただ山雅が運が良かったということだけではなく、『長野県にJを!』とことを強く願って来た長野県協会の努力がそんな大会を呼び込む事に成功し、そこに山雅はうまく流れに乗れたんだよね。

確かに2007年も、そして2009年も、長野県協会はやる気満々でしたね。

満を持して挑んだ初めての地域リーグ決勝大会だが、ホームの地でまさかの敗戦。ここからなかなか大事な場面で勝てない時期も続いたが、そこでの足踏みが、クラブを強くする礎となったことは間違いない。

満を持して挑んだ初めての地域リーグ決勝大会だが、ホームの地でまさかの敗戦。ここからなかなか大事な場面で勝てない時期も続いたが、そこでの足踏みが、クラブを強くする礎となったことは間違いない。

加藤そうそう。だからそういうのも重なって、悔しい思いもしたけど、また頑張ろうっていう思いどんどん強くして行った。やっぱりさ、ススッーと行ってしまうよりもね、紆余曲折を繰り返した方が、強いつながりや強固な組織が出来るんだとね。さっき言ったけどさ、そこはJリーグも理解してるところなんで、そういう意味を含めても、これから先にあんまり飛び級的なものを出すのもどうなのか? という話にも繋がっている。そしてこれもさっきも言ってることだけどさ、J3全体のチーム数の状況と、各チームの経営状況なんかが比較的良い状況であるなら、やっぱり一気に四つぐらい上げてもいいんじゃないかな? それでまたチーム数としてのバランスも良くなる可能性もあるのなら…なんていうことも、やっぱり考えないことはないのかも知れないね。

最終回に続く。

JFL事務局長インタビュー第1回はこちら
JFL事務局長インタビュー第2回はこちら

(了)

(著書プロフィール)
市川伸一(いちかわ・しんいち)
1971年、埼玉県生まれ。NHK番組制作スタッフ、グラフィックデザイナー、雑誌・web編集者を経て、現在はフリーライターとして活動。ザスパ草津チャレンジャーズを中心に、JFL、地域リーグなどマイナーサッカー界中心に取材を続ける。これまでの主な寄稿先は『スポーツナビ』『J’sサッカー』『エルゴラッソ』など。この他にも、グルメ情報サイトや中古車情報誌など、他分野においても活躍中。
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